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■■■■■■■■■■■■ 産学連携学会メールニュース
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■■■■■■■■■■■    J-SIP Mail
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■■■■■■■■■■■■ 発行:産学連携学会(編集WG)
 第635号 <2015.12.7>

当メールニュースではイベントのお知らせや公募情報等,
産学連携に関する情報をお流しいたします。
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あるいは産学連携学会事務局(j-sangaku@j-sip.org)までお寄せください。
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大会終了後の恒例の「座長報告」も今回で最後になります。
「学生の教育3」、「大学発ベンチャー」、「知的財産」の3つのセッションに
おける各講演の要点、まとめを会員の皆様にお届け致します。

産学連携学会第13回大会
一般講演、オーガナイズドセッション、ダイアローグセッション 座長報告(13)
  −学生の教育3   座長:中武貞文
  −大学発ベンチャー 座長:有田敏彦
  −知的財産     座長:李鎔m
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学生の教育3 座長:中武貞文
6月26日(金)第2日目E会場(13:30〜14:45)

本セッションでは5件の発表があった。産学官連携実務を通じた知見やネッ
トワークがアントレプレナーシップ教育や技術経営・ものづくり教育へ展開
されていること、さらにはキャリア教育や学士力とも関連づけがなされた取
り組みへ発展しようとしている事例の報告もあった。松浦(滋賀医科大学)
は、平成26年度から開始された文部科学省のグローバルアントレプレナー育
成促進事業(EDGEプログラム)に採択された滋賀医科大学の取り組みを報告
した。医学の単科大学におけるアントレプレナー教育という新しさと学生・
教員の意識変革をも視野に入れた挑戦的取り組みである。佐藤(佐賀大学)
は、佐賀大学にて実践してきたビジネスプランコンテストの10年の経緯と分
析結果を報告した。この取り組みから3社の学生発ベンチャーが創出されて
いることは特筆に値する。山名(富山大学)は、学部教育の総合科目の中で
進められている「職業と人生−ビジネス思考−」の事例を報告した。キャリ
ア教育を意識した企業の実務経験者の講義、学生と教員との意思疎通、学生
に課すレポートの工夫などを紹介した。松前(佐賀大学)は、韓国の大学と
の「日韓デザイン思考プログラム」について報告した。プログラム指定学士
力を踏まえ、映像表現を出口とすることを通じて空間デザインやプロダクト
デザイン、システムデザインを体験すること、さらにICT活用による遠隔地
間での共創に意義を認めたとのことであった。吉長(福井大学)は、福井大
学で実施している技術経営とものづくりとを合わせた教育プログラムである
「創業型実践大学院工学教育」の取り組みを報告した。学生のチーム構成の
工夫、「地域の匠」と呼ばれる豊富な経験と高い技術力を持つ人材との連携
協力という特徴を紹介した。
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大学発ベンチャー 座長:有田敏彦
6月26日(金)第2日目E会場(15:00〜15:45)

本セッションでは、北海道における大学発ベンチャーに関する2件の発表と
経済産業省が検討するベンチャー企業への支援の在り方について1件の発表
があった。竹内(北海道バイオマスリサーチ)は、帯広畜産大学発ベンチャ
ーとして、畜産系バイオマス利用を「地域システム」として解決することに
よりバイオマス発電事業、糞尿処理事業、有機肥料事業、有機農業への展開
などの「生業」を創り出す企業として成果について報告した。牧内(北海道
大学産学・地域協働推進機構)は、現在北大が検討している諸施策について
の計画と大学発ベンチャーブームからアベノミクスに至る現在の経済状況と
の関連において、今改めて北大発ベンチャーを促進するかについて報告した。
また宮本(経済産業省産業技術環境局大学連携推進室)は、これまで行われ
てきたベンチャーキャピタル等による大学発ベンチャーの各種支援が大学発
ベンチャーの成長に与えた影響を分析することにより、改めて大学発ベンチ
ャーの成長を促す支援の在り方について報告した。いずれも、大学の存在意
義を含め話題となっている産学官連携活動における成果の一つとしての大学
発ベンチャーの在り方や大学側の雇用創出を含めた地域貢献の在り方、また、
大学がなかなかできない支援の在り方について、3つの立場からの報告であ
り、その活用方法、効果、課題などについて活発な議論が行われた。本セッ
ションは、産学連携に関する期待と評価の対象ともなる大学発ベンチャーの
光と影を理解するきっかけの議論の場となった。
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知的財産 座長:李鎔m
6月26日(金)第2日目E会場(15:45〜16:45)

「知的財産」のセッションでは、4件の発表があった。北見工業大学の鞘師
守らは、同大学が保有する出願・公開特許情報をマップ化することによる北
見工業大学における研究への取組状況の特徴描出について発表した。北見工
業大学の強み研究領域の一つである「寒冷地工学」については社会環境工学
科の研究者による特許出願が多数ある一方で、社会環境工学科以外の学科
(機械工学科、電気電子工学科、情報システム工学科など)からも万遍なく
特許出願がされていること、またその特許出願の総数は社会環境工学科から
の特許出願数とほぼ同数であることを特許マップの分析から明らかにした。
このように特許情報を研究分野ごとにマップ化することにより、大学におけ
る様々な研究の取組状況の特徴を捉えることができ、産学連携活動のツール
の一つとして利活用できる可能性を示した。札幌医科大学の石埜正穂は、
2015年3月13日に閣議決定された「特許法等の一部を改正する法律案」
(2015年7月3日に成立、7月10日に公布)における職務発明制度の改正内容
について紹介すると共に、改正後の大学における発明の取り扱いについて発
表した。大学においては法改正後も従来の職務発明規定の内容を変えないま
ま使用しても基本的に問題ないとの見解を示した上で、国や企業と共同で行
うプロジェクト研究については権利帰属の不安定さを解消するために法改正
の内容(「従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定
めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定め
たときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰
属する」)に沿った形での合理的な学内規定の策定について検討する必要が
あるとの見解を示した。長崎大学の藤原雄介らは、大学における知財活動を
実践している立場から発明発掘のための時間確保とその必要性について発表
した。大学の知財担当者は限られたリソースの中で日々の日常業務に忙殺さ
れがちで自主的な発明発掘活動は後回しに(又は長年にわたって放置)され
る傾向にあるが、その改善策として集中的に発明発掘に専念する時間を強制
的に毎月1日以上設定した結果、減少傾向にあった発明相談・発明届の数が
増加し、さらにそれらの活動成果の中から技術移転契約に至った案件も案出
されたとの報告があった。このことから、大学の知財活動における発明発掘
活動の必要性・有効性が示された。東京医科歯科大学の谷関知佳らは、同大
学における研究マテリアル移転時の課題解決に向けた取組みについて発表し
た。東京医科歯科大学においては年間320件もの多数の研究マテリアル移転
契約(MTA)を締結しているがそのうち譲受MTAの1/4が特定の企業(外資系
大手マテリアルバンク)であること、そこでその特定の企業との包括契約の
締結(個別のMTAを省略)と専用ウェブサイトの立ち上げ、機関の全情報
(所属研究者の発注内容や手続き状況、過去の履歴等)の管理体制を構築し
たところ、事務処理の大幅な削減と研究の早期開始(マテリアル譲受に係る
日数が平均17日から平均7日に減少)、研究者個人での(不利な条件での)
契約締結の回避が図れたとの報告があった。さらに他の複数企業とも類似契
約を締結し契約の迅速化を達成しているとのことで本取組みが多数の研究マ
テリアルの移転時の課題解決に有効であることを示した。いずれの発表も、
大学の実践的知財活動の現場において重要な観点を含んだ取り組みであり、
今後のさらなる展開が期待される。
                                以上