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■■■■■■■■■■■■ 産学連携学会メールニュース
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■■■■■■■■■■■■ 発行:産学連携学会(編集WG)
 第0079号 <2007.8.10>
 
当メールニュースではイベントのお知らせや公募情報等,
産学連携に関する情報をお流しいたします。
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あるいは産学連携学会事務局(h19-office@j-sip.org)までお寄せください。


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1. 第2期会長任期を終えて

                     北海道大学 荒磯恒久


2.産学連携学会第5回大会 座長報告(2)
    −産業人材育成−
                     東北大学 長平彰夫


あとがき

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1.第2期会長任期を終えて
              北海道大学創成科学共同研究機構 荒磯恒久

 産学連携学会は難しい学会である。学会の目的は極めて現実的で社会からの
要請を真正面から受け止めるものでありながら、しかし、その土台となる産学
連携学が確立されていない。

 幾度と無く受けた質問「産学連携学とは何か」に対し、私は学会創設者の一
人、京都大学の澤田芳郎氏の言から説明した。「産学連携学はある面で社会科
学である。産と学は異なる規範体系と報酬体系を持つ社会であって、単純に融
合することは出来ない。」この言葉で質問者の顔から笑いが消え、私を見る眼
差しが真剣になる。次いで「融合のためには何が必要か。どんな手段があるか。
どんな成功例と失敗例があるか。」と議論は膨らんだ。会長就任当初、私が考
えていたことについては、日刊工業新聞に連載した「産学連携学事始め」を参
照していただきたい。
( http://www.cast.hokudai.ac.jp/05liaisoncenter/PDF/kotohazime-ALL.pdf )

 学会はその構成メンバーを産・学・官の全てのドメインに置く。年次大会は
これらの異なる文化を持つドメインの人々が、一つのルールのもとで発表・議
論を行うことを目的とする。大会を開催すること自体が「産学官連携」の実践
である。2006年開催の第4回大会は、初の東京都内での大会となり、300名を越
える参加者が熱心な議論を重ねた。この回の特徴は、参加者がそれまでの大学
産学連携部門の教員を中心とするものから、一般の学部へ広がったことであり、
学における産学連携の多様な展開を反映したものであった。2007年の山形県米
沢市での第5回大会では地域産学官連携の多彩な実践例と共に、産学連携の理
論面での充実に目を見張るものがあった。これらの大会を主催された群馬大学
・大石博海氏と山形大学・足立一成氏、小野浩幸氏に、また、両大会を通じて
プログラム編成を担当した大分大学・伊藤正実氏に心から感謝したい。
(参考)「産学官連携ジャーナル(JST)」でのレポート。
( http://www.sangakukan.jp/journal/main/200707/pdf/0707-11.pdf )

 大会と並んで、山口佳和氏(現千葉工大教授)を委員長とする学術委員会で
は学術誌「産学連携学会」の年2回発行を実現した。東北大学・長平彰夫氏の
編集になるテキスト「産学連携学入門」が刊行され、将来設計委員会の湯本長
伯委員長の企画による「産学連携講習」が3回に亘って開講された。これらの
活動から、学会設立当初からの大きな目標である「産学連携学」の確立へ着実
に歩みを進め、学会は冒頭に掲げた「難しさ」を一歩ずつ克服していると言え
る。

 秋季学術シンポジウム、第5回産学連携推進会議でのワークショップ・出展、
ニュースレター、メールマガジンの刊行など携わった事業は忘れられないもの
ばかりである。そのような学会活動とは少々趣が違うが、会長として感慨深い
ものに総会の開催があった。わずか30分の総会。決算報告やら事業予定やら、
聞いている側としてはさして面白みのない総会ではあるが、NPO法人の運営の
要になる極めて重要なものである。無事終了したときは「ああ、これで学会は
NPO法人として来期も存続できる」と安堵に浸ったことは少々ほろ苦い思い出
である。

 この2年間、学会は紛れも無く前進した。これは一重に会員個々人の産学連
携を追及するひた向きな情熱に負うものである。会員の方々の真剣な努力に僅
かでも役立てたなら、それは私の望外の喜びとするものである。
                     (2007年7月20日、荒磯恒久)
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2. 座長報告 「産業人材育成」

                          東北大学 長平彰夫

本セッションでは、産業人材育成に関しての大学での具体的取り組み事例3件
と商社でのMOT人材育成事例の計4件の発表が行われた。最初の名古屋工業大学
の小竹暢隆氏からは、経済産業省の「産学連携製造中核人材育成事業」に採択
された「自動車部品産業に学ぶ中堅・中小企業の生産ライン管理者の育成」に
おいて、地域産業の競争力向上を目指して、中堅・中小企業の工場長を主たる
対象としてコーチングを加味した育成を行った点についての発表が行われた。
他方、地域におけるMOT教育実施上の課題を正面から取り上げ深い分析を行っ
たのが4番目に発表した岡山県立大学の飯田永久氏である。その分析では、地
方では、ものづくり志向が強く、大企業はほとんど大学のMOT教育には参加し
ない。また、中小企業の経営者も参加しないという状況から、受講者の母数が
少ないという問題点を指摘していた。こうした隘路を打開する大学のMOT教育
のひとつの新しい試みとして「農業経営者養成」としてMOT農業版をスタート
させたのが、佐賀大学である。3番目の発表者である佐藤三郎氏は、世界を見
据えた農業生産法人の担い手の養成を目的としてMOT授業を提案しており、似
たような地域が多いことから今後発展可能性が大きく注目される試みと思われ
た。東京工業大学の永井明彦氏からは、商社におけるMOT人材養成について主
としてOJT方式による試みについての発表があった。

以上の発表で、特筆すべきことを最後にあげたい。それは、MOT教育が大都市
部や有力大学から地域や企業、農業などにまで広がりつつあることである。こ
のことは、MOT教育が、一時期のブームであった数年前の技術系中心、大学中
心の時代から現在では次のフェーズに移行しつつある兆候であり、それだけに
MOTプログラムの有用性、独自性が評価されるようになり、場合によっては淘
汰されることが起きはじめたことを示すものと考える。
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あとがき
前々回のメールニュース#77でお知らせしたように本メールニュースは、事業
委員会が担当し、グループリーダー藤原貴典(岡山大学)を中心に川ア一正
(新潟大学)、河崎昌之(和歌山大学)、佐藤三郎(佐賀大学)、内島典子
(北見工業大学)、丹生晃隆(島根大学)、松岡浩仁(信州大学)によって
編集、校正を行っています。会員の皆様の一層のご支援・ご協力をお願いし
ます。